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椎名未緒×じべた×鹿野亮太 対談

-まず、未緒さんとお二人の関係性を教えて下さい。

 

椎名未緒(以下、未緒):前回の対談で高校生の時に着メロサイトを作ってたって言ったじゃないですか。鹿野とはそこで出会ってるんです。当時、そのサイトに自分のメールアドレスを載せて着メロ作成のリクエストを募っていたんですよ。そこに何の曲か覚えてないけどリクエストを送ってきたのが彼です。

 

鹿野:La’Muleの「ask~ガラス神経~」です。

一同:笑

 

鹿野:そうしたら定型文っぽくないメールが返ってきて。

未緒:俺も好きだったから、もう作ってあったんだよね。

鹿野:当時僕はヴィジュアル系大好き高校生で、同じ高校の同級生や地元の友達にヴィジュアル系好きな人がほとんど居なくて、ヴィジュアル系友達が欲しかったので普通にメールを返してそこからお互いにメールのやりとりをするようになったのがきっかけです。

 

-そのときはまだ互いの顔も年齢も知らない状態ですよね?

 

鹿野:年齢はメールのやりとりの中でお互い高校生ってことがわかって、そこからメル友としての関係が始まって、お互いにMDに好きなバンドの曲を入れて送りあったりしてました。ダビ交(ダビング交換)ってやつですね。

 

-めちゃくちゃ青春ですね。その時はお互いバンドは組んでなかったんですか?

 

未緒:バンドごっこみたいなことはしてました。けど、俺はその着メロサイトで自分で作った曲のデモテープを売ったりもしていて、鹿野はそれを買ってました。

 

鹿野:その未緒君のデモテープの曲がめちゃくちゃ良かったんです。なので、未緒君は僕にとって着メロも作れて、かっこいい曲も作れる一つ上の先輩だったので、僕は未緒君のちょっとしたファンでした。

 

-そこからお二人がデルフィニウムで一緒にバンドをやるわけですね。

 

鹿野:僕は当時地元の先輩から誘われて別のバンドを組む予定だったんですけど、そのタイミングで未緒君は東京に出て来てバンドを組むことになったんです。それがデルフィニウムです。

 

未緒:俺はデルフィニウムにははじめドラムで入ったんです。

 

-初耳です!

 

未緒:というのも変な話ですけど、俺は当時持ってるギターで一番いいやつがEDWARDSだったんですね。でも俺の中でヴィジュアル系をやるならESPでないといけないという固定概念があったのでギターを諦めて、父親の影響でドラムも出来たのでドラムでデルフィニウムに加入しました。でもちょっとしたトラブルでギターに転向することになり、ドラマーを探していたところ浮かんだのが鹿野で、ちょっと会えない?って呼び出しました。

 

鹿野:知り合って1年以上メールだけの関係だったんですけど、そこで初めて顔を合わせました。

 

-そこですぐバンドをやらないかと話したんですか?

 

未緒:とりあえず困っていたので、入る入らないの話よりサポートでもいいから叩いてくれないかって話をしました。

 

鹿野:僕はその時、高校三年生だったので最初はサポートとしてデルフィニウムで叩き出して、高校を卒業してから正式メンバーとして加入しました。

 

-では、じべたさんとの関係を教えてください。

 

未緒:じべたは俺がデルフィニウムに入る事が決まって、初ライヴの1ヶ月前にあった撮影の日にメンバーにローディーとして紹介されたのが最初です。

 

じべた:ローディーって何やるのか全然わかってなかったですけどね(笑)

 

未緒:俺、人見知りなんで初対面の人とうまくしゃべれないんですけど、じべたは明るいのでフランクに話せて、撮影終わる頃には友達みたいな感じになりました。それで帰り際にメールアドレスを交換して、「今日はありがとうね!またよろしくね!」みたいなメールを送ったら「宜しくお願いします」って絵文字も何もない無感情なメールが返ってきて(笑)

 

じべた:俺、絵文字とかつけるの苦手で、メールすると暗い人だと思われるんです(笑)

 

未緒:ネットとリアルのギャップが凄まじくて多重人格かと思いました(笑)

 

-それでは未緒さんと出会う前のお話を聞かせてもらえますか?

 

じべた:やっぱり沖縄県民からすると東京は憧れだったので、仲の良い同級生と3人で東京に出てきて、その中の1人が蕾華というバンドにドラムとして入ることになったんです。俺も当時からヴィジュアル系が好きだったのでスタジオに遊びに行ってそのままそこに居付きました(笑)ただ、もうボーカルはいたので謎のポジションでふわふわしてたらのちにデルフィニウムのメンバーになるりく君が「じゃあローディーになっちゃいなよ」って。

 

-なるほど。

 

じべた:でも、何も知らなかったので「ローディーって何やるんですか?」って聞いたら「とりあえずタダでライヴが見れるよ」って言うからじゃあ、やります!って(笑)

 

-いろいろと間違ってますね(笑)

 

じべた:タダでライヴが見れるなんて美味しい話があるのかと思って、テキトーにお手伝いしていたら未緒さんが蕾華のメンバーと新しくデルフィニウムを結成して、俺もそのままデルフィニウムのローディーになったという感じですね。

 

-ということは3人が出会ったのはデルフィニウムなんですね。

 

未緒:そうです。メンバー、メンバー、ローディーという関係性で出会いました。

 

じべた:その関係性のままずっと続いてますね。

 

-ところで未緒さんとじべたさんは同居されてたんですよね?

 

未緒:じべたが沖縄に帰る3年前まで同居してました。

 

-結構最近まで同居されてたんですね。

 

未緒:いろんなところを転々としましたけど、ここ2人だけはずっと一緒でした。

 

-ということは3人はバンドを本格的に組む前、ないしは組みたての頃に出会ったということですが、当時はどんなヴィジュアル系が好きだったんですか。

 

未緒:俺はヴィジュアル系黄金時代、まさにL’Arc~en~CielとGLAYが世に大々的に出たところから自分がバンドをやるまでは幅広く通ってますけど、ピックアップするならPIERROTに一番のめり込んでました。時期でいうとその次はJILSですね。鹿野とはお互いにJILSが好きというところで仲が深まりました。

 

鹿野:JILS好き友達みたいなところはありましたね。

 

-JILSは男性ファン多いですもんね。

 

じべた:沖縄はJILSの音源を手に入れるのが大変で、メジャーしかわからなかったですね。なのでPIERROTやPlastic TreeとかMASCHERAを聴いてました。

 

未緒:MASCHERA最高だね。

 

鹿野:僕はJILSのほかだとSyndrome、Dué le quartzを筆頭にヴィジュアル系は一通り全部通ってましたね。激しくてシャウトしてるバンドも聴いたりしていましたが、中でもJILSが好きだったので、メロディアスでキャッチーで疾走感があってちょっと切ないみたいな王道な曲が好きでよく聴いていたので、それが自分のベーシックになったんだと思います。未緒君と好みは似てましたね。

 

じべた:沖縄には専門店もないのでインディーズバンドの音源は手に入らないし、ライヴにも来てくれないですからね。唯一来てくれたのがFANATIC◇CRISISでした。

 

-今となっては沖縄でのライヴも普通になりましたけど当時はなかったですしね。

 

未緒:昔は機材も大きかったから今より大変だったでしょうね。

 

じべた:だから関東に生まれた人は生まれながらの勝ち組なんですよ。

 

未緒:それは何を好きになるかにもよるでしょ(笑)海好きな人には沖縄勝ち組だし。

 

じべた:でも海は煽ってくれないからな~。

 

一同:名言だ(爆笑)

 

-でもそういう好みの音楽性があるなかでデルフィニウムの音楽性とは若干違いますよね。

 

未緒:ちょっとネタっぽいところはありますね。デルフィニウムの時代だけが俺の歴史の中で作風が横道にそれてると思ってて。

 

-たしかにキャンゼルとユナイトとは違いますね。

 

未緒:当時はしゃるろっととかShullaが好きで、かっこいい中にコミカルな要素があるバンドが好きだったんですけど、それをコミカルにしすぎたんでしょうね(笑)。かっこいい中のコミカルじゃなくて、コミカルの中のかっこいいにしてしまったという。

 

じべた:でも、他にああいうバンドいなかったよね。

 

鹿野:他と違うことやろうみたいな意識もありましたね。

 

未緒:毎ライヴ衣装を変えたりしてましたね。何も知らなかったんで、毎回変えたら面白いね、位の感じで。けど現実的な無理もあり結果的に高田馬場AREAの当時の店長にアドバイスをもらってやめましたけど。結成当初はビジュアル系の内側のルールとか業界の事を何も知らないど素人で組んだバンドだったので、ノルマの負担をスタッフにも払わせてたり、出待ちのお客さん達とメンバー全員で一緒に電車に乗って帰ったり、そのままお客さん達とファミレスでご飯を食べたりしてました。今考えると凄い事してたなあ、と。無知って恐い。

 

-そのデルフィニウム時代に出来たのが「マグロ漁」なわけですね。

 

じべた:そもそもこの曲は僕とデルフィニウムのギターのまひるさんで始めたインド洋というセッション用にまひるさんが作ってくれた曲なんです。

 

未緒:そのセッション企画が始まった時にまっひー(まひる)が「オリジナル曲作りましょうよ!」って作ってきたのが「マグロ漁」の原曲なんですけど、それが良い意味で凄いしょぼくて(笑)それを俺がかっこよくアレンジして、そのアレンジが何気に気に入ってたのでいつかもっといい音で録り直したいなと思っていて、3年くらい前にデモを作り直して、沖縄にいるじべたに歌だけ録って送ってってお願いして歌のデータが来ないまま3年待ちました(笑)

 

一同:爆笑

 

-結果的に3年待ったことによりちゃんと音源になったんですね。

 

未緒:たぶん3年前だったらYouTubeにあげて終わりのはずでしたね。

 

じべた:ありがたい話です。でも今回他のボーカルさんの曲も聴きましたけど異質ですね。

 

未緒:めちゃくちゃ浮いてます(笑)

 

-ということは鹿野さんは当時のデモから知ってるということですよね?

 

鹿野:もちろんまひる君が作った凄いしょぼい原曲のデモも知ってるし、未緒君が作り直したかっこいい「マグロ漁」も知ってます。なので、あの曲をちゃんとレコーディングしてリリースするなんて、という驚きはあります。

 

-そういう意味では鹿野さんはドラムに適任ですね。

 

鹿野:適任というかあんな曲僕くらいにしか頼めませんよ(笑)

 

-ドラムレコーディングに関してはいかがでしたか?

 

鹿野:これに関してはこだわりはないです(笑)。未緒君からも「鹿野の好きに叩いていいよ」と言われていたので、本当に好き勝手叩きました。しいて言うなら普段ドラムレコーディングの際にガイドとしてデモを聴きながら叩くんですけど、この曲は歌聴くと笑っちゃうので歌なしのデモを流してもらいました。あとこれは裏話なんですけど、曲の中に僕と未緒君の関係を表す様なものを出したいなと思って「マグロ漁」の曲中のほんの一部に僕と未緒君が共通して好きだったJILSのとある曲のドラムのワンフレーズをオマージュとしてさりげなく叩いてます。多分これに気付くのは世界で僕と未緒君の二人だけだと思うくらいさりげなく。

 

-歌録りはいかがでしたか?

 

じべた:未緒さんに「サボったね~」って言われましたけど自由に歌いました。

 

未緒:じべたから原曲のサビのキーがもう出ないって言われたので、好きにサビメロ変えていいよって言ったら原曲より高いキーのメロになっていたのがフリが効いてたなあ、と(笑)

 

一同:爆笑

 

-コーラスにまひるさんも参加されてますね。

 

じべた:今回はまひるさんが主役です!

 

未緒:最初は予定になくて普通に遊びに来ただけだったんですけど、お願いしたら満更でもなさそうだったので急遽飛び入り参加してもらいました。

 

-元々はまひるさんが作った曲ですもんね。

 

じべた:という意味ではまひるさんの元に戻ってきた感はありますね。

 

-鹿野さんは「彗星」のドラムにも参加されていますね。

 

未緒:鹿野はそっちがメインですからね(笑)

 

-ちなみに鹿野さんは「彗星」のボーカルを担当したタケルさんはご存知ですか?

 

鹿野:もちろんです大好きでした。当時、しゃるろっと、Shulla、みるふぃね、ぐりむという高田馬場AREAに出演してる若手バンドがいい時代で、その中でもぐりむは本当に曲が好みで、タケルさんの歌声も光っていたので好きでよく聴いてました。なので、椎名未緒という人の繋がりでタケルさんのボーカルで、僕がドラムを叩くなんて夢のようなお話ですね。

 

じべた:僕もタケルさんはメジャーバンドを含めても一番好きな声ですね。

 

-「彗星」のドラムに関してはいかがですか。

 

鹿野:こっちは真面目に叩きました。これは昔からなんですけど、未緒君はデモの段階でドラムをかなり細かく作り込んでくるので基本はデモ通りに叩きます。そこに少し自分のエッセンスを織り交ぜていく感じです。

 

-未緒さんは鹿野さんのドラムはいかがでしたか。

 

未緒:走ってるなぁって(笑)俺自身も現代ナイズされちゃってるのでレコーディングも波形で見たりとか、あとで修正するって思って見てたんですけど、昔はそういう録り方はしてなかったし、走ってても聴感上かっこよければウワモノをそこに合わせればいいだけなので、その走り癖が鹿野っぽさだとも思うのでそういう面もあえて残してあります。

 

-数あるソロ曲の中から「彗星」のドラマーに鹿野さんを選んだ理由はなんですか?

 

未緒:この曲の仮タイトルが「バンドやろうぜ」だったんです。俺の中での王道のエッセンスがちりばめてあって、俺が見てきたヴィジュアル系黄金時代のトップバンドがやってたことを今の椎名未緒が噛み砕いたような曲だと思っていて、例えばアコギの裏で付点八分のディレイが鳴ってたりとか、そういう聴く人が聴けば「わかる!」ってなるものを詰め込んだんです。なのであの時代をちゃんと見てる人がいいし、ソロ曲を並べた時に鹿野が一番好きそうなのが「彗星」だったというのもあって自然に決まりました。

 

鹿野:まさに自分の好きな感じでした。僕も自然とこれだと思ってました。

 

-仮タイトルとお二人のバンドを組む前からの関係性というところを考えても必然のように感じられますね。

 

鹿野:あと、未緒君は曲のデモが出来ると僕に聴かせてくれるという文化がかれこれ10年以上続いていて、その100曲以上あるデモの中でもこれは名曲だ!と思ったのがキャンゼルの「twilight」「sink.」、ユナイトの「Eniver」「約束」「Invit’」なんですけど、最近のデモでそれに匹敵する位良い曲だと思ったのが今回のソロに収録されている「Az」だったんです。

 

-うらやましい関係です。

 

鹿野:椎名未緒感がすごいある曲なので、もしこの曲をソロで出すなら僕が叩きたいなと思ってたんですけど、僕はシンプルでストレートなドラムは得意としてるんですけど、その反面「Az」のドラムは小技が効いてて細かくて難しいので僕じゃなくてよかったとも思いました。

 

一同:爆笑

 

鹿野:もちろん「彗星」も凄く良くて、僕の中で「Az」に次ぐ2番手だったので現実的に考えて「彗星」を振られてよかったなと思います。

 

未緒:「Az」は難しいからね(笑)

 

鹿野:でも本当に「Az」はキてた。 それこそキャンゼルの「青色LOVERS LINE」と通ずるものを感じて、「青色LOVERS LINE」が夏っぽいイメージに対して、「Az」は冬っぽいイメージがあって、椎名未緒感のある曲の二大巨頭なイメージを持ちました。

 

-前回いっちさんも「青色LOVERS LINE」に通じるって話してましたね。

 

じべた:めちゃくちゃ「Az」推すじゃん!鹿野は「Az」を叩いたの?(笑)

 

一同:爆笑

 

-では、最後にこの企画に参加していかがでしたか。

 

鹿野:僕は2014年に音楽活動から身を引いたんですけど、その時にこれから先は誰かに必要とされて、それに対して自分が縁を感じるもの、そしてこれは僕がやるべきと思ったもの、この3つの条件が揃わない限りドラムは叩かないと決めていたんです。で、今回このお話を頂いて、これだ!と思いました。

 

-まさに全ての条件が揃ってますもんね。

 

鹿野:なので、未緒君が僕にドラムをお願いしてくれて嬉しかったし、僕自身これを叩くのは僕しかいないという自信もあったし、高校生の頃からの付き合いの未緒君のやりたい事に少しでも華を添えられてよかったと思います。

 

じべた:「マグロ漁」にもそれを感じたから叩いてくれたの?

 

一同:爆笑

 

じべた:沖縄に帰ったらもうみんなには会えないと思っていたけど、ユナイトはここ最近

毎年ツアーで沖縄に来てくれてわざわざ会いに来てくれるし、今回もこうして声をかけて頂けて絆を感じるし、いい関係だなと思います。

 

未緒:人生初の"ちゃんとした"CDデビューだもんね。

 

じべた:そうですね。自分の声がちゃんと入ってる音源っていうのは不思議な感じがあります。幻なんじゃないかって(笑)いい体験になりました。ありがとうございました。

 

-未緒さん、お願いします。

 

未緒:前回の対談でも言ったんですけど、自分が死んだときに流す音楽を作るって考えた時に、今まで関わってきた人との交友関係の中でこの2人は絶対欠かせないんです。なので、このCDのどこかしらに関わってもらいたいというのはソロをやると決めた時から決めていました。じべたは「マグロ漁」で不服かもしれませんけど(笑)

 

じべた:不服ではないです!(笑)

 

未緒:そういう形でAPPLIQUEというパッケージの中に二人の名前がクレジットとして残る事は俺にとってすごく価値があることだと思ってますし、APPLIQUEっていうメンバーではないんですけどひとつのファミリーの中に入ってもらえてよかったと思います。

 

-本当にいい関係ですね。

 

未緒:ユナイトの椎名未緒だけしか知らない人にはこの関係性はわからないだろうし、昔はそれこそじべたは同居人としてユナイトファンにも知名度があったんですけど、年々じべたへの反応が薄くなってきているので、今回をきっかけにこの二人が椎名未緒にとってどういう人達なのかを曲と対談で残しておけるのがすごく良かったと思います。

 

(取材・文 オザキケイト)

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