椎名未緒×猟平×RYO:SUKE 対談

-もはや説明は必要ないかと思いますが、改めて未緒さんにとってこのお二人がどんな存在か聞かせてください。

 

椎名未緒(以下、未緒):まず俺も含めてバンドを動かす立場であり、リーダーという立場に翻弄されてきた共通点がありますね。なので楽しい話より辛い話をすることの方が多いし、そういう面を共有できてシンパシーを感じる、いわば苦悩に関しての共通言語を持つ一番身近な二人ですね。ソウルメイトです。

 

-そう言われるお二人はどのように見られていますか?

 

RYO:SUKE:以下同文です(笑)。俺に関して言えば未緒君とは世代がドン被りなので同じような光を見たと同時に、同じような泥水を啜ってきたと思ってるし、猟平君もだと思うけど音楽に対して気持ちいいと思うポイントがすごく近くて、すべてを語らずとも行間で会話が出来る三人だなと思います。

 

猟平:僕がヴィジュアル系を始めようとした時点でもうすでに売れていたお二人だし、むしろ雑誌でずっと見ていたような存在なので、仲良くさせていただくようになったここ最近までは勝手にシンパシーを感じているような感じでした。

 

-憧れのような存在だった、と。

 

猟平:僕がCLØWDを自主で始めるにあたって、未緒さんやRYO:SUKEさんはキャンゼルや少女-ロリヰタ-23区(以下、ロリヰタ)というスターダムにのし上がったバンドの中心にいた方なので憧れの対象でしたね。なので今こうやって一緒に何かできるのは光栄だなと思います。

 

-お互いに一番身近でかつ、特別な存在ということが伝わってきます。

 

未緒:そういう意味でお互いが一番身近なリスナーでいてくれる存在とも思っていて、二人がどんな曲を作るか聴きたいし、逆に俺が作った曲も聴いてほしいので、デモが出来るとお互いに投げ合ってます。

 

-以前の対談で鹿野(亮太)さんにも送ると話していましたね。

 

未緒:これはバンドによると思うんですけど、ユナイトはデモを投げても選曲会まで誰からも感想がないんです。俺は肯定も否定も意見は全部欲しいから何かしらのレスが欲しいんですが、無反応なのが面白くなくて(笑)。やっぱり作った曲に対して何らかのレスが欲しいんですよ。

 

RYO:SUKE:わかる!

 

未緒:そういうところでRYO:SUKE君と猟平、元游彩の慶君とさっき名前が挙がった鹿野は送るとちゃんとレスをくれるので一番身近なリスナーとして信頼しています。

 

-ということはお二人は未緒さんがソロを始めると決める前からデモ曲を聴いていたわけですが、未緒さんがソロを始めるまでの経緯をどのように見ていましたか?

 

RYO:SUKE:そもそも、ユナイトが難しい局面に直面して辛そうだった未緒君にソロをかなり強くすすめたうちの一人は俺なんです。

 

未緒:一番最初に提案してくれたのがRYO:SUKE君でした。

 

RYO:SUKE:俺自身がソロアーティストとして活動していた中で、きっと未緒君も自分のようにソロをやるべき人だと思うようになって。逆に出会った当初は俺がキツい時期で、メンタル的な部分で俺のやってる事にアグリーをくれた数少ない人が未緒君だったし、俺はそれがきっかけで立ち直れて交流が始まったんです。

 

-そうだったんですね。

 

RYO:SUKE:俺が立ち直るのと入れ替わるような形で未緒君が大変な時期に入って、俺は俺で音楽への向き合い方の答えが見つかったタイミングで、未緒君との関係性も深くなっていたし、未緒君の心が健康を取り戻すための一つの方法論としてソロを提案しました。

 

未緒:そもそも俺はバンドの歯車であり続ける覚悟を持っていたので、ソロは一生やらないと思ってたし、その発想自体俺になかったんです。

 

-どこでソロの話が持ち上がったのでしょう?

 

未緒:提案してくれたのはユナイトの5周年の少し前くらいからありました。ただ、そのために動くことは全くしていなかったし、RYO:SUKE君から“ソロは得る物が多いよ”とは言われていたから、興味自体はありつつも、俺にはユナイトがあるから、とソロ案を封殺していました。

 

-話は聞いていたけど保留の状態だったんですね。

 

未緒:現実味を帯びてきたのはユナイトの2017年始に解散騒動が出たくらいですね。このタイミングでリーダーとして無意識に制御していたものに対して、わがままな言い方をするのであれば、“なんでこんなに我慢する必要があるんだろう?”って思いだして、一つの方法論としてソロに対してポジティブに考え出しました。

 

-先にソロをやられていたRYO:SUKEさんの意見を参考にしたりされたんですか?

 

未緒:実際、ギターを置いて歌うってところまでは腹を括れなくて。作家としてインスト曲をやりたいわけじゃないからボーカルが必要だし、でも自分が歌うのは違うと二の足を踏んで結局一年以上経ってるんですけど。そこから何かのタイミングでボーカルは人に頼むっていう手があると気付いて、どんどん前向きにソロに取り組んでいった感じですね。

 

-猟平さんはどのように渦中の未緒さんを見ていましたか?

 

猟平:僕が未緒さんと仲良くなったのが解散騒動の後で、曲を投げ合うような関係性になってちょっとしてからソロをやるということを聞いたので、僕が相談を受けたとか、助言をしたとかはないですけど、それを聞いたときにあの曲たちがついに日の目を見るのかと思いました。

 

未緒:その時はまだソロに関しても具体性を欠いていたし、いつかソロをやるかも程度の感じだったからね。

 

猟平:でも当時、未緒さんの曲作りのペースが速すぎて(笑)。デモが来た翌日とかに新しいデモが来たりしてましたよね。

 

未緒:ユナイトの曲出し期間だったのもあるけど一日に二曲とか作ってたからね(笑)

 

RYO:SUKE:あの時は頭がおかしいのかと思った(笑)

 

一同:笑

 

-その当時、デモ段階の「-273.15℃」と「彗星」の印象は覚えていらっしゃいますか?

 

RYO:SUKE:まず「ぬりかべ」っていう仮タイトルにパンチがあったのが印象的で、自分がやってる音楽に近いこともあって「好きだな」と思いましたね。

 

猟平:僕のルーツのひとつにLUNA SEAがあるんですけど、あのシンコペーションとドライヴ感にLUNA SEAを感じました。まだその時はソロの話とか何も聞いてなかったんですけど、この未緒さんが打ち込んだ完璧なベースを人間が弾いたときにいかにもっと良くできるかの勝負だと思ったし、どうすればもっとうまく聴かせられるかを勝手にイメージするくらい好きな曲でした。

-以前の対談でも未緒さんの作るデモは作り込まれているとお聞きしましたが、レコーディングするにあたってそのデモ通りのフレーズで弾かれたのでしょうか?

 

RYO:SUKE:デモに入っていたベースはメロディアスなものだったんですけど、俺はベーシストとして頑なにボトムしか弾かないというスタンスを決めているので、相当自分流にアレンジさせてもらいました。というのも、「少女-ロリヰタ-23区リョヲ丞」としては派手なパフォーマンスありきのプレイヤーというテーマで自分を作ってきたのもあって、「リョヲ丞がこの曲をライヴで弾くなら」という解釈でフレーズを考えました。なのでベーシスト・リョヲ丞が好きな人にもぜひ聴いてほしいですね。

 

猟平:僕は逆に未緒さんの緻密に作り込まれたデモを下手に自分のアレンジで崩すより、この完成形を活かしたいという思いが強かったので、折り返しのフックで手癖を入れたり、行ってないオクターブに行ったりというところで出来るだけグルーヴを意識しましたけど、基本的にはデモを一番に尊重する形にしました。

 

-今回ボーカリストは第一線を退いている方をメインにオファーをされてますが、楽器陣に関してもユナイトのメンバーは除いて同じような理由で選んだのでしょうか?

 

未緒:楽器陣に関してはあまりそういう理由はないですね。大前提として俺が楽しくやれないと意味がないと思っていたので好きな人をピックアップしました。RYO:SUKE君も猟平も好きなベーシストだし、そらお君(ex.THE KIDDIE)とは昔一緒にバンドやろうって言って実現しなかった過去があって、そういう成し得なかった伏線を回収したいという思いもありました。

 

-いい話ですね。

 

未緒:大蛇君(ex.游彩)に関してはユナイトの6周年直後のZEAK LINKツアーで一緒だったんですけど、当時バンド内がぎくしゃくしていて居心地も悪くて、居場所がなかった時に出会ったのが游彩やCLØWDでした。俺自身後輩と積極的に関わらないし、はじめは猟平のグイグイくる感じが煙いなと思っていたんですけど、慕ってくれるし、そうやって無理やり居場所になってくれたことですごく救われたんです。

 

猟平:懐かしいですね。

 

未緒:その後の游彩のやり切れない解散の瞬間も見ていたし、彼らの居場所になってあげることはできないけど、ベーシストとして「鋼鉄のリンネ」を大蛇君のキャリアの一つとして提供できたら少し位はお返しになるかなと思って。なので本当に好きな人を選んだらこうなりました。

 

-そんな中でお二人をこの曲にキャスティングされた理由はなんだったんですか?

 

未緒:「彗星」はさっき猟平が言ってたように好きって言ってたからで、「-273.15℃」に関しては今作で唯一ラウドな要素を持っていて、WING WORKSと近いエッセンスを持ってるのがこの曲だったというところです。

 

RYO:SUKE:やっぱりそうだよね。この曲にキャスティングされた時に采配が上手いなと思ったのと同時に、俺の強みを未緒君はわかってくれてるなと思ったので、今の話を聞いてすごく腑に落ちた。

 

-冒頭でもお話があったように、この三人はバンドを動かす立場であり、バンド活動に翻弄されてきた三人で、バンドの大変さを良く知る三人だと思います。その中で未緒さんはバンドと並行してソロ、RYO:SUKEさんはソロ一本、猟平さんは作家転向と三者三様の現在が個人的にとても興味深いです。当時はやはり辛い事が多かったですか?

 

猟平:バンドなので辛い事があるのは当たり前ですけど、そういう時に未緒さんやRYO:SUKEさんに話を聞いてもらっていたし、同じ悩みを共有できるソウルメイトと言ってもらえるような存在としてお二人と出会えたことは大きかったですね。

 

未緒:俺たちも過去に同じようなところで壁にぶつかってたからね。

 

猟平:リーダーはやることをやっても評価はされないけど、ミスした時だけ矢面に立たなければいけないし、でもリーダーはその当たり前の部分に命を懸けていることに対してお二人が“リーダーは大変だよね。何も報われない。”って言ってくれたことで肩の荷が下りて、気持ちが楽になったのでお二人にはすごく感謝しています。

 

RYO:SUKE:これは仕方のないことなのかもしれないけど、ずっと一緒にいると感謝の気持ちって忘れがちだよね。

 

猟平:そういう意味で誰しもバンドをやるうえでのフラストレーションはあると思うんですけど、未緒さんは今回ちゃんと別の場所を自分で作って音楽でアウトプットしているのは素晴らしいと思います。

 

RYO:SUKE:本来それが普通なんだけどね。

 

猟平:そうなんです!それが普通なのに、結局それをせずに衝動的に爆発して解散してしまったりするじゃないですか。自分が表現できなかった部分の矛先をバンドに向けるのではなくしっかり自分の場所を別に見つけるべきだと思うんですよ。

 

RYO:SUKE:これはあくまで持論だけど、「バンドマン」と「ミュージシャン」は似て非なるもので、俺たちは音楽をやりたくてバンドをやっている人間だからこういう今があるけど、本質的にバンドをやる理由がそこにない人も多いと思うんだよね。

 

未緒:バンドや他のメンバーに求めるエゴイズムが減ったのはソロをやってよかった点ですね。それはもうソロで消化すればいいと思えるようになったことが、一時的だとしても心の健康に繋がったとは思います。

 

-あくまでユナイトを終わらないバンドにするための解決策としてのソロである、と。

 

未緒:正義と正義がぶつかっていざこざが起きて解散するバンドが多いし、ソロをやらずに自分の中に不健康な感情をため込んでいたらいつか俺も爆発して自暴自棄になってバンドを壊していたかもしれないけど、今は壊す理由がないんですよね。自分のエゴは自分で解決できる場があることで無理やり納得させられていると感じています。

 

-その中猟平さんは先日作家転向を表明されました。ソロやバンドではなくなぜ作家だったのでしょうか?

 

猟平:一番大きな要因は僕の中でCLØWDは最高傑作だったんです。大きくなれなかったし、売れなかったけど、やりたい音楽をやれたし、入りたい事務所に入れた。けどてっぺんは取れなかったというのはそういうことなんだなと自然と身を引けたんですよね。

 

-なるほど。

 

猟平:でも音楽は好きだし、曲は作りたいし、人に聴いてほしいので、必然的にぴったりだったのが作家でした。

 

-もうヴィジュアル系に未練はないですか?

 

猟平:さっきの理由が8割くらいで、残りの2割を挙げるとするならば、今現在もこのシーンで活躍されてるお二人を前に言うのは心苦しいんですけど、ヴィジュアル系バンドのシーンが正直少し苦しいなと感じるようになりました。シーンとしての衰退ももちろんあるとは思うんですけど、昔みたいにドキドキしなくなってしまったんですよね。でも、ヴィジュアル系に生まれてしまったからには一生ヴィジュアル系だし、ヴィジュアル系を嫌いになることなんてないとも思ってます。ただ、このシーンでまた0からバンドを組むことは考えられなかったです。

 

-バンドマンである以前にミュージシャンであり、自分が納得する音楽をやるためにそれぞれの現在地があるということですね。

 

未緒:そういうところでは、今回の作品を作ってみてわかったけど自分が満足いくものを作るためにミックスを出来るようになりたいなと思いました。言葉で指示しても伝わり切らない部分が多いし、それこそこれも正義と正義の水掛け論になるシーンもあって。年々業界スタンダードやプロクオリティとの比較とかよりも自分が好きだと思う音で仕上げたくなってきてしまって、そうするためには最終的に自分がエンジニアになるしかない、と。

 

猟平:結局メインコンポーザーとして自分のイメージする音を具現化するところまでで完成形ですもんね。

 

RYO:SUKE:俺は少し違って、自分の理想とする形でアルバムを完成させることが出来たから、次はゴールに余白を設けたいなと思ってるモードなんだよね。もちろん理想形はあるうえで、俺がまとめればWING WORKSになる自信があるし、色んなミュージシャンやクリエイターと自分との化学反応を今後もっともっと楽しみたいと思ってる。

 

未緒:それが俺にとってユナイトなんだと思う。五分して俺が20%だとしたら、余白が80%。化学反応はユナイトで楽しんで、ソロは最も濃密な椎名未緒感を残していきたい感じかな。

 

-バンドと並行してソロをやる未緒さんと、ソロ一本のRYO:SUKEさん、同じソロでもそれぞれがソロをやる理由がそこに詰まっている気がします。

 

猟平:僕自身、前のバンドでメンバーが作った曲に対して意見することがきっかけでそれを解消するために自分で作曲を始めたので、そのうちエンジニアリングもいずれ自分でやりたくなってしまう気がします(笑)

 

未緒:きっとすぐになるよ。

 

RYO:SUKE:作家としてそこは出来た方が絶対にいいと思う。

 

猟平:作詞に関しても同じで僕はやったことなかったんですけど、CLØWDを始めてから自分が納得する歌詞を書きたいからという理由で書き始めました。そこでふと思ったのは、曲を作るプレイヤーは多いですけど、作詞するプレイヤーってあまりいないし、ここ三人はみんな作詞するプレイヤーで、全員が全員すごく個がある歌詞を書くなと思いました。

 

RYO:SUKE:これは隠れた共通項だね!

 

-歌詞を書く際にみなさんは何を意識されてますか?

 

未緒:俺は以前の対談でも話しましたけど、綺麗事と汚いものをちゃんと両方書くということですね。俺自身、字面の綺麗なピュアな歌詞が好きなんだけど、メッセンジャーを兼ねてるミュージシャンでそれだけを並べてる人は嫌いで。綺麗なものを綺麗に見せるために比較対象として汚いものを見せないと自分の中で自分という人間性の整合性が取れないので、悪口みたいな醜悪な部分も落とし込むようにしてます。

 

RYO:SUKE:俺はロリヰタのときは「物語」を描くことに徹していて、そういう意味では読み物として綺麗なものであることを何よりも大切にして書いてて。歌詞で読み手をここではないどこか別の世界に連れて行くことが自分の歌詞なんだと思っていたんだけど、それがいつからか自分自身の気持ちを伝える方向にシフトして“命を燃やせ”というワードが生まれたんだよね。

-RYO:SUKEさんの象徴とも言えるワードですよね。

 

RYO:SUKE:WING WORKSではその“命を燃やせ”を掲げて負の感情の中からの光を書いていたんだけど、今年ロリヰタが改めて終わったことを受けて改めてまた物語を描きたいと思っていて。ただ、これまでの物語と決定的に違うのは自分が歌った時に、その物語や世界がライヴの空間に広がってお客さん共有とできるかどうかというところで、その「はっきり伝えたい」みたいなマインドはWING WORKSをやっているからこそ持てた感覚だと自分では思っていて。

 

-ロリヰタの頃の難解な読み物として世界観のある歌詞と、WING WORKSで書いている心を揺さぶるようなメッセージ性のある歌詞が手を取り合ったということですか?

 

RYO:SUKE:まさしくそうです。これまでの俺のすべての音楽人生を繋げたアルバムを作れたと思ってるし、これからもその気持ちで作品を作っていきたいという思いがあるんで。誰のインタビューだって感じだけど(笑)

 

未緒:大丈夫!もうすぐリリースだもんね。

 

-猟平さんの歌詞はいかがですか?

 

猟平:詞を書き出した理由はさっき言ったようなきっかけだったんですけど、書いていくうちに僕は「バタフライ・エフェクト」のようなメッセージ性のある歌詞のほうが得意で、物語は上手じゃないことがわかったんです。でも「紅い意図」でセールスを意識して初めて物語を描いたらお客さんからの評判はよかったんですけど、少し満足感に欠けていたのも事実でした。

 

RYO:SUKE:そうだよね。

 

猟平:で、その後の「NO BORDER」では自己満足でもいいから自分の書きたいことを詰め込もうと思って書いたら、お客さんのリアクションは濃いものじゃなかったですけど、先輩方や友人や関係者からの評判がすごく良くて、個人的にもこっちの方が満足度がすごく高かったんです。僕自身にこういう部分があるからこそアーティストでいたいなと思いました。

 

-この対談もついに最終回となりますが、未緒さんにお聞きします。ソロを形にしてみていかがでしたか?

 

未緒:一言でいえば最高でした。これはバンドが下回るとかそういう意味ではないんだけど、これまで俺がバンドで感じていた幸せは既に5等分されたもので、その20%のひと欠片を100%の幸せだと思っていたということがわかりました。そもそもバンドはそういうものだし、バンドはみんなの努力の結晶だということも理解してるけど、今回ソロをやって今まで自分が感じてたものは実は20%で、全部自分でやって、苦労したことで感じる100%はこんなにも幸せなのかと実感しました。

 

RYO:SUKE:でしょ!

 

未緒:RYO:SUKE君にはずっと言われてたんです。“CDが出来上がって自宅に届いて、段ボール開けた時泣くほどうれしい”って。当時は“泣くもんかね?”と思ってたけど、物理的な涙は出ないまでも泣くほどうれしいって気持ちはすごくわかりました。

 

RYO:SUKE:段ボールにカッター入れて開けた瞬間に自分がデザインした盤が出てくるときの感動すごかったでしょ?俺はあの感覚は一生忘れないもん。

 

未緒:キャンゼルのときが自主だったから、その感覚って実は経験したことあるはずなのにいつの間にか忘れちゃってたんだよね。誰かの尽力のお陰でCDが出来ることで、喜びが薄れちゃってて、今回全部自分でやって、全部自分が責任を負うことが俺が求めてた制作というものだと思ったし、ここまでやらないとわからなかったんだなぁと思った。

 

-100%の幸せを得るためにはその苦労を含めた工程が必要だったんですね。

 

未緒:昔RYO:SUKE君が“どんなに少女-ロリヰタ-23区・リョヲ丞を愛してくれても、WING WORKS・RYO:SUKEを愛してくれない人がいることが悲しい”と言っていて、俺はそれに対して“違う形でもどちらかを好きならば本質的には自分を愛してくれているって所は同じなんじゃない?”と答えたんだけど、まるっきり違うことがわかりました。俺自身への愛はともあれなんですが、音楽の部分でユナイト・椎名未緒の曲が好きでもAPPLIQUE・椎名未緒の曲は好きじゃないって言うのであれば、本当の意味で俺の音楽性が愛されているとは思いにくいし、ユナイトで椎名未緒が残してきた曲が好きならAPPLIQUEの曲も本質的には好きなはずで。そうでないなら“椎名未緒の曲が好き”とは認められないくらいAPPLIQUEの楽曲が愛情深い存在になってしまったから、あのときRYO:SUKE君が言ってたのはこういうことだったのか、って。

 

RYO:SUKE:厳密に言うと、好きじゃないというか興味がない、ってことが悲しいんだよね。好きか嫌いかは好みだから仕方ない部分だけど、ユナイトで椎名未緒が書いてきた曲が好きなら少なからず興味は持って聴くべきだと思う。

 

未緒:感想は好きでも嫌いでも素直な気持ちでいいんだけど、聴いては欲しいよね。同じ作家の作品だし。

 

猟平:僕もバンドが解散して作家に転向して実感するんですけど、先日発表したWING WORKSのアルバムへの参加や、アイドルに提供した曲を現場に聴きに行きますって言ってくれるファンがいてくれるのはめちゃくちゃうれしいし、幸せですね。

 

未緒:でも、今話してて思ったのは、現時点で俺が思ってる100%ですら、自分で歌もギターもベースもドラムもやる人からしたらまだまだなのかもしれないって思ったし、これが100%って言い切るのは危うい発言だなと思いました。

 

RYO:SUKE:それこそさっき出たミックスや、マスタリングまでやったら満足度はさらに上がるかもしれないしね!

 

-もしかしすると、今後未緒さんがさらなる100%を目指して全ての楽器をやるようなことも…?

 

未緒:ゼロではないけど今のところはないです(笑)。今回のフォーマットでの作品も最高の形で完成出来たと思っているので。

RYO:SUKE:未緒君のイメージする音を具現化することが幸せなのであるなら、それを自分でプレイすることで達成されるならそれでいいけど、間違いなく今回参加したプレイヤーでないと再現できないフレーズもあるだろうし、そういう意味で今の在り方が未緒君の一番の幸せなのかもね。

 

-APPLIQUEというプロジェクトは未緒さんと参加するメンバーの関係性も含まれていますもんね。

 

未緒:そうですね。

 

RYO:SUKE:未緒君、APPLIQUEでライヴやろうよ。

 

未緒:うーん……。ライヴをやらないのはユナイトへの俺なりの誠意でもあって、CDを出してライヴもして、ってなってくると、ユナイトへのライヴ動員が厳密には少し割れるじゃないですか。それは望む所ではなくて。ユナイトあってのソロだとは真摯に考えているので、CDのリリースもユナイトとバッティングしないタイミングを見計らってますし、ライヴの動員力がバンドの生命線のこの時代において、安易にソロでのライヴ活動は出来ないなと思ってます。そういう意味でもずっと“ライヴはぴんとこないなぁ”なんて言ってるけど、3年前は“ソロはぴんとこないなぁ”って言ってたからどうなるかわからないよね(笑)

 

RYO:SUKE: さっきの100%論で言うと未緒君の100%はまだ広げられると思ってて、それがライヴなんだけど。ライヴで曲をお客さんと共有することでマインド的なキャッチボールが必ずあると思うんだよね。それがいわゆるヴィジュアル系のライヴハウスである必要すらなくて、そういうハコはユナイト・椎名未緒が連れて行けばいいし、ユナイトでは連れて行けないシチュエーションだって絶対あると思うんだよね。

 

猟平:たしかに。それめちゃくちゃいいですね。

 

RYO:SUKE:APPLIQUEの音楽性的には、着席制のきらびやかな歌モノが映えるような会場にファンを連れて行ってあげるのも新たな幸せなんじゃないのと思うよ。

 

-では、最後に今回の企画に参加していかがでしたか。

 

猟平:改めて、同じ曲でないにしろRYO:SUKEさんだったり素晴らしいプレイヤーと一緒に出来たことは自分にとっての大きな財産になったし、それに加えて昔から付き合いのある未緒さんと音を重ねて、リリースまで出来たのは本当に最高の経験になったのでうれしかったです。ありがとうございました。

 

RYO:SUKE:ひとつまた夢が叶ったな、と。それもお互いに続けてきたからだと思います。ただ、大事なのは今回を踏まえてさらにこの強固になった絆をもって今後何をするかだとも思っているので、それぞれの次の一手がどう交わってくるかを楽しみしていたいなと思います。なので、ソロアーティストとして命を削って作ったこの作品をどうか受け流さずに、ユナハンッッ!!か、もしくは俺は自主盤倶楽部のインストアイベントに出るので自主盤倶楽部で買いなさい。命令形です。

 

-では、未緒さん、今回で対談も最後となります。〆の言葉をお願いします。

 

未緒:“APPLIQUE”というのは椎名未緒という人間をいろんな人に手伝ってもらうことを、アップリケを貼るように装飾して彩っていくという意味でつけたんですけど、今回の作品は満足のいくものが出来ました。それと同時に楽しいという感情の部分で音楽を作れたのが刺激的で、大変なんだけど心が安らぐ時間でもありました。最初はネガティブ寄りの見切り発車で始めたけど、いつの間にかそんなネガティブな要素はなくなって、良いものを作りたいとか、聴いた人が喜んでくれるものを俺の手で届けたいという純粋なものが残ったので、無事それを達成できたのは良かったと思います。

 

-未緒さんらしいネーミングセンスだと思います。

 

未緒:“APPLIQUE”のもう一つの意味として、みんなから力を貸してもらうのと同時に俺の力を高めるためのプロジェクトでもあって、そのために今回エンジニアリングも含めて現状自分で出来ることは全部やったし、おかげでスキルアップもしたと感じています。なので今度は誰かのことを自分がアップリケとして装飾できるような存在になりたいとも思っていて。その中で今月リリースされるWING WORKSのアルバムに参加したり、今後猟平が作家として俺のギターが必要になったら力を貸すつもりだし、俺も誰かにアップリケを貼れるような相互の関係が生まれているのが俺の中ですごく意味があることで、これを続けていくことが誰かのためにもなって、俺のためにもなるプロジェクトになっていけたらいいなと思っています。改めて参加して下さった皆さん、今後とも宜しくお願いします!

(取材・文 オザキケイト)

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